物価高で家賃も上がる?日本の賃貸に届く「家賃改定通知」の読み方
8月21日、総務省が7月分の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)を発表しました。詳しい数値は公表資料を確認いただきたいのですが、物価が前年から上昇を続けている基調自体は変わっていません。こうした物価動向を背景に、契約中の賃貸物件で「来月から家賃を値上げします」という通知を受け取る借主も増えています。
母国では家賃改定に馴染みがない読者にとって、この通知は戸惑いの種になりがちです。本記事では、家賃改定通知が届く仕組み、貸主が一方的に値上げできるのか、増額に納得できないときの進め方を整理します。
家賃改定通知はどんなときに届く?
家賃の値上げ通知は、契約更新のタイミングに合わせて届くケースと、契約期間の途中で届くケースの両方があります。背景としては、周辺の家賃相場の上昇、固定資産税など貸主側のコスト増加、建物の大規模修繕費用の回収などが挙げられることが多いとされています。通知には多くの場合、現在の家賃・新しい家賃・適用開始時期・値上げの理由が記載されています。
貸主は自由に家賃を値上げできる?
結論から言うと、貸主が一方的に通知するだけで新家賃が自動的に確定するわけではありません。借地借家法は、土地・建物の価格や物価の変動、近隣の家賃相場などに照らして現在の家賃が不相当になったとき、貸主・借主のどちらからでも将来に向けた家賃の増減を請求できると定めています。つまり値上げ請求権自体はあっても、借主が増額に同意しない限り、協議・調停等の手続きを経ることが前提になります。
ただし、契約書に「一定期間は家賃を増額しない」といった特約がある場合はその定めが優先されることがあり、逆に「合意なしに自動更新で家賃据え置き」という契約もあります。まずは自分の契約書にどのような条項があるかを確認することが出発点です。
増額に納得できないときはどう進める?
新家賃に納得できない場合、いきなり支払いを拒否するのではなく、まずは貸主または管理会社に増額の根拠(周辺相場の資料など)を確認し、協議を申し入れるのが実務上の基本です。話し合いで折り合わない場合、借地借家法に関する紛争は訴訟の前に民事調停を経ることが原則とされており、簡易裁判所の調停手続きを利用できます。調停係属中や協議中は、これまでの家賃を支払い続けることで足りるとされるのが一般的な考え方ですが、貸主が受け取りを拒否するなどの事情がある場合は、法務局への供託という選択肢も検討されます。
契約更新時の値上げと更新料は別物?
家賃改定と更新料は、法的な性質が異なる別の費用です。更新料は契約書の特約に基づいて更新のタイミングで一時金として支払うもの、家賃改定は毎月の家賃そのものの水準を見直すものです。同じタイミングで通知が重なることもあるため、請求書や通知書のどの部分が更新料でどの部分が新家賃なのかを、金額ごとに分けて確認することが大切です。
確認しておきたい目安
- 値上げ通知が届く目安のタイミング
- 1〜2ヶ月前
- 借地借家法上の家賃増減請求権の根拠条文
- 32条
- 訴訟前に民事調停を経るのが原則
- 調停前置
契約・慣行による
貸主・借主双方に認められる
簡易裁判所が窓口
根拠となる法令
- 借地借家法 第32条第1項
- 土地・建物の租税等の負担の増減、価格の変動その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の家賃相場との比較により、現行の家賃が不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって家賃の増減を請求できるとされています。ただし一定期間増額しない旨の特約がある場合は、その定めが優先されます。
- 借地借家法 第32条第2項
- 増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまで、相当と認める額の家賃を支払えば足りるとされています。
- 民事調停法 第24条の2
- 借地借家に関する紛争については、原則として訴えを提起する前に民事調停の申立てをしなければならないとされています(調停前置主義)。
家賃改定と更新料の違い
| 項目 | 家賃改定(値上げ) | 更新料 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 借地借家法第32条(増減請求権) | 契約書の特約(法律上の一律義務なし) |
| 対象 | 毎月の家賃そのもの | 更新時に一度だけ支払う一時金 |
| 同意なしの効力 | 当然には確定せず、協議・調停が前提 | 特約があれば契約上の債務として発生 |
| 納得できない場合 | 協議・調停、係争中は従来家賃の支払いで足りる | 特約の有効性自体を争う余地は限定的 |
よくある漏れと対策
✕値上げ通知に驚いてすぐ新家賃を振り込み、後から増額に同意したものとして扱われた。
→納得できない場合は振り込む前に、異議がある旨を書面・メールで伝え、従来の家賃額を支払い続ける。
✕契約書を確認せず、増額しない旨の特約があることに気づかないまま値上げに応じてしまった。
→通知を受け取ったら、まず契約書の家賃改定に関する条項を確認する。
✕貸主が家賃の受け取りを拒否したため、支払い方法が分からず滞納扱いになってしまった。
→受け取り拒否等の事情がある場合は、法務局への供託制度を検討し、必要に応じて専門家に相談する。
✕更新料の請求と家賃改定の通知が同時期に届き、金額を混同したまま合計額を鵜呑みにした。
→請求書・通知書の内訳を項目ごとに分けて確認し、それぞれの法的根拠を区別する。
家賃改定通知を受け取ったときの確認リスト
- 通知書に記載された値上げの理由・根拠を確認した
- 契約書に家賃改定に関する特約があるか確認した
- 新旧家賃の差額と、根拠とされる周辺相場の資料を確認した
- 納得できない場合、異議がある旨を書面・メールで伝えた
- 協議がまとまるまで、従来の家賃額を支払い続けた(または供託を検討した)
- 更新料の請求と家賃改定を区別して金額を確認した
- 必要に応じて簡易裁判所の民事調停窓口や専門家への相談を検討した
よくある質問
- Q. 通知が来たらすぐに新しい家賃を払わなければいけませんか?
- A. 直ちにその義務が発生するわけではありません。納得できない場合は異議を伝えたうえで、協議や調停が続く間は従来の家賃額を支払えば足りるとされています。
- Q. 借主から家賃を下げてほしいと請求することもできますか?
- A. 借地借家法第32条は貸主・借主双方に増減請求権を認めているため、理論上は可能です。ただし契約書の特約内容によっては制限されている場合もあります。
- Q. 増額に応じないと退去させられてしまいますか?
- A. 家賃改定に応じないことだけを理由に、一方的に契約を解除して退去を求めることは一般に認められにくいとされています。ただし滞納など別の問題がある場合は状況が異なります。
- Q. 外国人でも民事調停を利用できますか?
- A. 国籍による利用制限はありません。手続きは日本語が基本となるため、通訳の同行や専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいとされています。
SUMIMOTO Hub のアプリでは、24時間対応のAIアドバイザーが家賃改定通知の読み方や、契約書に記載された特約の意味を多言語で解説します。実際に増額の妥当性を判断したり調停手続きを進めたりする際は、宅地建物取引士や弁護士など有資格の専門家に確認することをおすすめします。
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