日本の不動産を相続したら相続税はいくら?非居住者相続人の申告と納税管理人
日本国内の不動産を持つ親族が亡くなり、海外に住む相続人がそれを引き継ぐケースが増えています。相続税は「日本に住んでいないから関係ない」というものではなく、財産の所在地が日本であれば、相続人の居住地にかかわらず申告義務が生じるのが原則です。
とはいえ実務では、基礎控除の計算、申告期限、特例の適用可否、納税管理人の選任など、居住者の相続とは勝手が違う論点がいくつも出てきます。ここでは海外在住の相続人を念頭に、押さえておきたい要点を整理します。
相続税は誰にどれくらいかかる?
相続税は、相続や遺贈によって取得した財産の合計額から基礎控除額を差し引いた残りに対してかかります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するのが一般的な目安です。この控除額を超えなければ、原則として相続税の納税は発生しません。
ただし、控除額を超えるかどうかを判断するには、不動産をはじめとする財産を時価(相続税評価額)で洗い出す必要があります。日本の不動産は路線価や固定資産税評価額をもとに評価するのが実務上の基本的な考え方です。
目安として押さえる数字
- 基礎控除額の計算式
- 3,000万+600万×人数
- 相続税の申告・納税期限
- 10ヶ月
- 相続税率の幅
- 10〜55%
法定相続人の数で変動
相続の開始を知った日の翌日から
取得金額に応じた超過累進税率
海外に住む相続人にも申告義務はある?
相続税の納税義務者になるかどうかは、相続人自身の国籍・住所や、被相続人(亡くなった方)の住所・国籍の履歴によって判定が分かれます。日本国籍がなく日本に住所もない相続人であっても、日本国内にある不動産を相続で取得した場合は、その財産について相続税の申告義務を負うのが一般的な扱いです。
「海外に住んでいるから日本の税務署とは無関係」という思い込みは、後になって延滞税や無申告加算税につながりかねません。相続開始後は早い段階で、相続人それぞれの納税義務の範囲を確認しておくことをおすすめします。
根拠となる法令
- 相続税法 第1条の3
- 相続や遺贈により財産を取得した個人のうち、どの範囲の者が相続税の納税義務者となるかを定めています。国籍・住所の状況により、課税対象となる財産の範囲(国内外全ての財産か、国内財産のみか)が異なります。
- 相続税法 第2条
- 納税義務者の区分に応じて、相続税が課される財産の範囲を定めています。
- 相続税法 第22条
- 相続財産は、原則として相続開始時の時価により評価するものとされています。実務上は国税庁の財産評価基本通達に基づき、土地は路線価等を用いて評価します。
- 相続税法 第27条
- 相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に提出しなければならないとされています。
- 相続税法 第62条
- 国内に住所を有しない相続人等は、納税管理人を定めて税務署長に届け出るべき旨が定められています。
小規模宅地等の特例は海外在住でも使える?
被相続人が住んでいた自宅の土地について、一定の要件を満たすと評価額を大きく減額できる「小規模宅地等の特例」があります。ただしこの特例は、取得する相続人がその家に同居していたか、あるいは一定期間日本国内に自己所有の家を持たずに暮らしていた「家なき子」に該当するかなど、要件が細かく設定されています。
海外に長期間住んでいる相続人は、この要件を満たさず特例の対象外となるケースが少なくありません。特例が使えるかどうかで評価額、ひいては納税額が大きく変わるため、相続人ごとの居住状況を早めに整理し、適用可否を個別に確認しておく必要があります。
相続税率の速算表(一部抜粋・目安)
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
納税管理人とはどんな役割?必要書類は?
日本国内に住所がない相続人は、日本での申告・納税手続きの窓口となる「納税管理人」を選任し、所轄の税務署に届け出る必要があります。納税管理人は日本国内に住所を持つ親族や、税理士に依頼するのが一般的です。
申告にあたっては、戸籍関係の書類のほか、海外在住者であることを示す在留証明に代わる書類(在外公館が発行するサイン証明・在留証明、または現地公証人によるアフィデビットなど)が必要になる場合があります。取得には時間がかかることが多いため、相続発生後はできるだけ早く準備に着手してください。
よくある漏れと対策
✕海外在住だからと相続税は関係ないと思い込み、申告期限の10ヶ月を過ぎてしまった。
→相続開始を知った時点で、日本国内財産の有無と自身の納税義務の範囲をすぐに確認する。
✕小規模宅地等の特例が使える前提で遺産分割協議を進めたが、要件を満たしていなかった。
→分割協議をまとめる前に、各相続人の居住状況と特例の適用要件を税理士に確認する。
✕納税管理人を選任せず出国し、税務署からの連絡や還付手続きが滞った。
→相続税の申告前に納税管理人を選任し、所轄税務署へ届け出る。
✕サイン証明や在留証明の取得に時間がかかり、申告期限の直前になって慌てた。
→在外公館での証明書取得は早めに予約し、必要書類を逆算してスケジュールを組む。
相続発生後の確認チェックリスト
- 被相続人・相続人それぞれの国籍と住所の履歴を確認した
- 日本国内の不動産・預貯金等の財産を洗い出した
- 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比較した
- 不動産の相続税評価額(路線価等)を確認した
- 小規模宅地等の特例の適用要件を確認した
- 納税管理人を選任し、税務署へ届け出た
- 在留証明・サイン証明等の必要書類の取得に着手した
- 申告を依頼する税理士を決めた
よくある質問
- Q. 相続人全員が海外在住でも申告は必要?
- A. 日本国内に相続財産があれば、相続人全員が海外在住であっても申告義務が生じるのが一般的です。それぞれについて納税管理人の選任が必要になる場合があります。
- Q. 申告期限の10ヶ月に間に合わなさそうなときは?
- A. 遺産分割がまとまらない場合でも、いったん法定相続分で按分した内容で申告・納税し、後日更正の請求や修正申告で調整する方法があります。詳細は税理士にご確認ください。
- Q. 日本と居住国の両方で課税されることはある?
- A. 居住国の相続税・遺産税制度と租税条約の内容によります。二重課税の調整方法については、両国の税務に詳しい専門家にご相談ください。
- Q. 相続した不動産をすぐに売却する場合、相続税以外に注意点は?
- A. 相続税の申告とは別に、売却時には譲渡所得税や非居住者に対する源泉徴収が関わってきます。取得費の引き継ぎ方法とあわせて事前に確認しておくと安心です。
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