不動産投資公開日

民泊の収益はいつまで続く?大阪の規制強化に学ぶ制度リスクの見方

大阪市は「特区民泊」の新規受付を2026年5月29日で終了しました。関西テレビの報道によれば、その後、旅館業法にもとづく民泊の開業申請と相談が急増しており、マンションの一室で「旅館業」の許可を取る形が、事実上の迂回路になっているとの指摘が出ています。市はこれを受けて、規制をさらに強める方針です。

この話は「大阪で民泊をやるかどうか」だけの問題ではありません。収益物件を買うとき、私たちは今ある制度を前提に利回りを計算します。その前提が保有期間の途中で書き換わったとき、何が残るのか。本記事では、大阪で起きたことを教材にして、制度リスクを収支にどう織り込むかを整理します。

大阪で何が起きた?

特区民泊は、国家戦略特別区域法にもとづく「外国人滞在施設経営事業」の通称です。大阪市はこの制度の新規受付を終了することを決め、内閣総理大臣の認定は2025年11月28日付で出ています。受付終了は2026年5月29日でした。

終了の理由として挙げられているのは、騒音やゴミ出しといった周辺住民からの苦情の増加です。2026年5月末までに、全国の9割超にあたる8,887施設が特区民泊として認定されていたとされ、制度としては既に相当な規模に達していました。

そして受付が閉じたあと、申請は隣の制度へ流れました。旅館業法にもとづく開業申請と相談が急増したのです。大阪市はさらに、営業許可の条件そのものを見直す方針を示しています。

大阪市の動きを読むための数字

特区民泊の認定施設数
8,887施設

2026年5月末時点。全国の9割超にあたるとされる

大阪市の特区民泊 新規受付終了
2026/5/29

内閣総理大臣の認定は2025年11月28日付

騒音苦情のうち木造・鉄骨造の施設
243

2024〜2025年度に大阪市へ寄せられた苦情の8割超

住宅宿泊事業の年間提供日数の上限
180

住宅宿泊事業法上の目安

民泊には制度が3つある。どれで回すつもり?

日本で住まいを短期で貸し出す方法は、大きく3つの制度に分かれます。名前はどれも「民泊」と呼ばれることがありますが、根拠となる法律も、許可の重さも、営業日数の扱いも違います。

収益物件を検討するとき、まず決めるべきは「どの制度で回すのか」です。制度が違えば、必要な設備も、建物に求められる条件も、自治体が制限をかける手段も変わります。

短期賃貸に関わる3つの制度(一般的な整理)

制度根拠法営業日数の目安主な特徴
特区民泊国家戦略特別区域法 第13条日数上限の定めなし国家戦略特区の区域内に限られる。一定の最低宿泊日数が求められる
住宅宿泊事業(民泊新法)住宅宿泊事業法年間180日以内届出制。自治体の条例で区域や期間が制限されることがある
旅館業(簡易宿所など)旅館業法 第3条日数上限の定めなし都道府県知事等の許可制。設備や構造の要件が相対的に厳しい

根拠となる主な法令

国家戦略特別区域法 第13条
いわゆる特区民泊(外国人滞在施設経営事業)の根拠となる規定です。実施できる区域や認定の要件が定められています。
住宅宿泊事業法 第2条
住宅宿泊事業の定義に関する規定です。人を宿泊させる日数が年間180日を超えないものとされています。
住宅宿泊事業法 第18条
都道府県等が条例により、区域を定めて事業の実施期間を制限できるとされています。自治体ごとに条件が異なる根拠のひとつです。
旅館業法 第3条
旅館業を営もうとする者は、都道府県知事等の許可を受ける必要があるとされています。
建築基準法 第48条
用途地域ごとに建てられる建築物の用途が制限されます。その場所で宿泊施設として使えるかは、ここでも左右されます。

e-Gov 法令検索

なぜ「建物の構造」が条件に入った?

大阪市の条例改正案では、木造や鉄骨造の長屋・アパートを原則として認めず、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造であることを営業許可の条件に加える方向が示されています。

根拠として挙げられているのは苦情のデータです。2024〜2025年度に市へ寄せられた騒音苦情のうち、8割超にあたる243件が木造または鉄骨造の施設に関するものでした。遮音性の低い建物に苦情が集中していたため、建物の構造そのものを入口で絞るという整理です。市は国に対しても、指導・監督を強化するための法令改正を求めています。

収益の前提は、どう点検する?

大阪で起きたことを一般化すると、「制度をひとつ閉じると、人は隣の制度へ流れ、やがてそこも絞られる」という順序になります。特区民泊の受付終了から旅館業への申請急増、そして構造要件の追加まで、1年もかかっていません。

ここから引き出せる教訓は「短期賃貸をやめておけ」ではありません。制度の変化は、投資判断の材料のひとつとして扱えるものだ、ということです。問題は、制度が変わらない前提で利回りを計算し、それを唯一のシナリオにしてしまうことにあります。

実務的には、収支を1本ではなく3本作っておくと判断しやすくなります。ひとつは今の制度で短期賃貸を回した場合。ふたつめは、その制度が使えなくなり別の制度へ切り替えた場合。みっつめは、どちらも使えず普通賃貸で貸した場合です。3本目でも返済と経費が回るなら、その物件は制度の変化に耐えます。

よくある漏れと対策

  • 今の制度で回る利回りをそのまま持ち続けられる前提で購入し、受付停止や条例改正で出口が塞がった。

    短期賃貸ができなくなった場合に普通賃貸で回した収支を、購入前にもう1本作っておく。

  • ある制度が閉じたので隣の制度に切り替えればよいと考えていたが、切り替え先の要件も引き上げられた。

    切り替え先の要件(構造・設備・用途地域)を先に確認し、保有物件がそれを満たすかを判定しておく。

  • 行政の許可要件だけを確認し、マンションの管理規約を見ていなかった。

    重要事項説明と管理規約の写しで、短期賃貸に関する定めの有無を購入前に確認する。

  • 苦情が出てから対応を考え、営業の継続そのものが難しくなった。

    騒音やゴミ出しの運用ルールと連絡体制を営業開始前に決め、近隣へ周知しておく。

短期賃貸を前提に物件を選ぶ前のチェックリスト

  • 物件の建物構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)を登記事項証明書等で確認した
  • 短期賃貸で使う場合の根拠制度(特区民泊・住宅宿泊事業・旅館業)を決めた
  • その制度の新規受付状況を、物件所在地の自治体の公表資料で確認した
  • 用途地域と、その地域で宿泊施設として使えるかを確認した
  • 分譲マンションの場合、管理規約に短期賃貸を禁止する定めがないか確認した
  • 短期賃貸ができなくなった場合の、普通賃貸での収支を試算した
  • 近隣からの苦情に対応する連絡体制と運用ルールを決めた

よくある質問

Q. 特区民泊の新規受付が止まったら、すでに営業している施設はどうなりますか?
A. 一般に、新規の受付を終了することと、既存の認定が直ちに失効することは別の扱いとされています。ただし指導・監督は強化される方向にあるため、個別の扱いは認定を受けた自治体に確認してください。
Q. 木造のアパートを買ってしまいました。もう短期賃貸には使えませんか?
A. 構造の要件は制度ごと・自治体ごとに異なります。大阪市では条例改正案で木造・鉄骨造の長屋やアパートを原則認めない方向が示されていますが、これは同市の方針であり、他の自治体に自動的に当てはまるものではありません。物件所在地の自治体にご確認ください。
Q. 収益物件を選ぶとき、制度リスクはどこまで見ればよいですか?
A. 少なくとも「いま使える制度」「その制度が閉じたときの代替」「どちらも使えないときの普通賃貸での収支」の3段階を見ておくと、判断の幅が広がります。
Q. 規制が強まっているなら、短期賃貸の投資自体を避けるべきですか?
A. 規制の方向だけで一律に判断するものではありません。要点は、制度が変わりうることを前提に収支を組めているかどうかにあります。

SUMIMOTO Hub のアプリでは、AI 査定で物件の収支を試算しながら、24時間対応の AI アドバイザーが用途地域や管理規約の読み方を多言語で解説します。制度の適用可否や許可の要件については、最終的に物件所在地の自治体と、行政書士など有資格の専門家にご確認ください。

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