竣工前マンションはまだ「買い」?東京23区1億4千万円時代の利回りの見極め方
不動産AI査定サービスを運営するMFSが2026年9月10日に公表した「CAPS 価格動向レポート」によれば、竣工前マンション(3LDK・70㎡換算)のAI査定価格は、全国平均で6,795万円(前年同月比+8.9%)、東京23区では1億4,572万円(同+13.3%)に達しました。上昇基調は今年に入っても続いています。
価格が上がり続けているという事実だけを見ると、「今のうちに買わないと」という焦りにつながりやすいところです。ただ収益物件として検討するなら、価格の水準そのものより、その価格でどれだけの利回りが取れるかのほうが重要です。本記事では、竣工前マンションを投資対象として見るときの利回りの読み方と、契約前に確認すべき点を整理します。
AI査定価格は「今の適正価格」と同じ?
CAPSのようなAI査定サービスは、過去の成約事例や市場動向を統計的に処理して、対象物件の推定価格を毎月更新する仕組みです。膨大なデータをもとに機械的に算出される点で、個人の感覚に頼るより客観性のある目安にはなります。
一方で、AI査定価格はあくまで統計モデル上の推定値であり、実際の成約価格そのものではありません。同じ沿線・同じ築年数帯でも、眺望や日照、管理状態によって成約価格は上下します。査定額を「これで買うべき価格」と読み替えるのではなく、相場感をつかむための出発点として扱うのが実務的です。
2026年9月時点の竣工前マンション価格(MFS「CAPS 価格動向レポート」)
- 全国平均のAI査定価格
- 6,795万円
- 東京23区のAI査定価格
- 14,572万円
- 査定の前提となる専有面積
- 70㎡
前年同月比+8.9%(3LDK・70㎡換算)
前年同月比+13.3%(3LDK・70㎡換算)
3LDKタイプで換算した想定値
表面利回りと実質利回り、何が違う?
収益物件を比較するとき、最初に目にするのはたいてい「表面利回り」です。これは年間の家賃収入を物件価格で割っただけの数字で、計算は簡単ですが、保有中にかかる費用を一切含んでいません。
実際に手元に残る収益を見るには、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料といった経費を差し引いた「実質利回り」で試算する必要があります。同じ物件でも、表面利回りが高く見えて実質ではそれほど高くない、というケースは珍しくありません。
表面利回りと実質利回り(一般的な整理)
| 区分 | 計算の考え方 | 含まれる費用 | 主な使い方 |
|---|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 | 含まない | 複数物件の一次比較 |
| 実質利回り | (年間家賃収入 − 年間経費)÷(物件価格 + 諸費用) | 管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料等 | 保有後の収支シミュレーション |
たとえば物件価格1億4,572万円、想定家賃が月28万円だとすると、表面利回りは年336万円 ÷ 1億4,572万円で約2.3%になります。ここから管理費・修繕積立金・固定資産税などを差し引き、諸費用を加えた実質利回りで見ると、数字はさらに下がるのが一般的です。価格が上がるほど、表面と実質の差が投資判断に与える影響は大きくなります。
竣工前(青田売り)ならではの確認事項は?
竣工前マンションは、完成後の物件と違って現物を見て確認することができません。図面や完成予想パースを頼りに判断することになるため、契約内容の確認がより重要になります。
宅地建物取引業法では、未完成物件を売買するときの手付金等について、一定額を超える場合に保全措置を講じることが定められています。契約前に、保全措置の対象となるか、どの保証機関が扱うかを確認しておくと、売主の経営状況が変化した場合のリスクを抑えられます。
関係する主な法令
- 宅地建物取引業法 第35条
- 契約前に、宅地建物取引士が重要事項を説明することが義務づけられています。竣工前物件では、工事の進捗管理や引渡し時期に関する事項も確認の対象になります。
- 宅地建物取引業法 第41条
- 未完成物件の売買において、手付金等が一定額を超える場合、業者は保全措置を講じなければならないとされています。
- 宅地建物取引業法 第37条の2
- 一定の条件下で、買主が書面によりクーリング・オフ(契約解除)できる旨が定められています。
価格上昇局面で見落としやすいのは?
相場が右肩上がりのときほど、「今買わないと乗り遅れる」という心理が働きやすくなります。ただ収益物件である以上、判断材料は購入時点の価格だけでなく、保有期間中の家賃収入・経費・出口(売却)まで含めた一連の収支です。
特に、AI査定価格の上昇率がそのまま将来の賃料上昇率になるわけではない点には注意が必要です。物件価格と賃料は連動して動くとは限らず、価格だけが先行して上がる局面では、利回りはむしろ縮小します。
よくある漏れと対策
✕AI査定価格をそのまま「今の適正価格」と思い込み、相場全体の上昇を鵜呑みにして指値交渉の基準にしてしまった。
→同じ沿線・同じ築年数帯の複数物件と比較し、AI査定はあくまで参考値の一つとして扱う。
✕表面利回りだけで判断し、管理費・修繕積立金・固定資産税を見落として、手取りが想定より少なかった。
→契約前に実質利回りを試算し、空室期間も織り込んだ複数のシナリオを作っておく。
✕竣工前物件で、引渡し時期の遅延や仕様変更が生じた場合の取り決めを確認していなかった。
→重要事項説明で工事の進捗管理・引渡し遅延時の取り決めを確認する。
✕手付金等の保全措置の有無を確認せずに契約し、売主の経営状況が変化した場合のリスクを抱えた。
→宅建業法上の保全措置の対象になるか、保証機関の名称を契約前に確認する。
竣工前マンションを検討する前のチェックリスト
- 同エリア・同築年数帯の複数物件で利回りを比較した
- 管理費・修繕積立金の将来の見直し計画を確認した
- 固定資産税・火災保険料等を織り込んだ実質利回りを試算した
- 引渡し予定日と遅延時の取り決めを重要事項説明で確認した
- 手付金等の保全措置の有無と保証機関を確認した
- 空室リスクを織り込んだ複数パターンの収支を作った
よくある質問
- Q. AI査定価格は、そのまま成約価格と考えてよいですか?
- A. 一般に、AI査定価格は統計モデルによる推定値であり、実際の成約価格とは差が生じ得ます。契約前に不動産会社の査定や近隣の取引事例もあわせて確認することをおすすめします。
- Q. 表面利回りと実質利回り、どちらを重視すべきですか?
- A. 物件の一次比較には表面利回りが使われることが多いですが、保有後の収支判断には諸経費を織り込んだ実質利回りのほうが実態に近いとされています。
- Q. 竣工前物件(青田売り)は、完成済み物件よりリスクが高いのでしょうか?
- A. 完成後の物件と違い、現物や周辺環境を確認できない点、引渡し時期が変動しうる点はリスク要因です。契約内容と保全措置を確認したうえで判断することをおすすめします。
- Q. 価格が上昇し続けている今は、買うタイミングとして適切ですか?
- A. 相場水準だけでなく、金利動向やご自身の資金計画、保有期間中の出口戦略まで含めて検討することが一般的に勧められます。
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