鳶工事業の倒産はなぜ過去最多に?新築価格と修繕費への影響を読み解く
東京商工リサーチ(TSR)が2026年9月23日に公表した調査によれば、足場や鉄骨、支柱などの工事を担う「鳶工事業」の倒産件数は、2026年1〜8月の8か月間で110件に達しました。前年同期比で26.4%の増加で、この期間としては16年ぶりに100件を超える水準です。
「鳶工事業の倒産が増えている」というニュースだけを見ると、建設業界の中の出来事のように感じられるかもしれません。ただ、足場を組む職人がいなければ、外壁工事も屋上防水も、新築の躯体工事も進みません。この記事では、TSRの数字を出発点に、新築購入やマンションの修繕費用を考えるうえで押さえておきたい一般的な視点を整理します。
鳶工事業の倒産、何が起きている?
TSRの調査によれば、負債1,000万円以上の鳶工事業の倒産は、1989年以降の同期間で見るとリーマン・ショック時の2009年(105件)を上回り、過去最多のペースです。年間ベースでは2010年の148件が最多ですが、このペースが続けば2026年は170件に達する可能性があるとされています。
倒産の原因は、売上不振が78件(構成比70.9%)、赤字累積が24件(同21.8%)で、業績不振によるものが9割を超えています。加えて「物価高」を理由とする倒産が9件(前年同期3件)、「人手不足」を理由とする倒産が19件(同10件)と、いずれもほぼ倍増しています。厚生労働省のデータでは、建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7.94倍とされ、全業種平均の1.18倍を大きく上回ります(この有効求人倍率の数値はTSRの調査のみで報じられており、他の情報源での裏付けは本記事執筆時点では確認できていません)。
人手不足はなぜ新築価格や修繕費に関わってくるの?
足場が組めなければ、外壁や屋根、鉄骨といった工程は前に進みません。鳶工事業のような専門工事業で人手不足と倒産が重なると、一般論としては、工期の見通しが立てにくくなったり、限られた職人を確保するための人件費が上昇したりする可能性が指摘されます。これが新築マンションや戸建ての価格、あるいはマンションの大規模修繕費用にどこまで反映されるかは、地域や工事の種類、発注のタイミングによって差が大きく、一律に「上がる」と断定できるものではありません。
重要なのは、TSRの調査自体は倒産件数や原因を集計したものであり、価格や工事費への影響を数値で試算したものではないという点です。「職人不足だから来年は必ず値上がりする」という単純な因果関係として受け止めるのではなく、コストが上振れしやすい環境にあるという背景情報として押さえておくのが実務的です。
マンションを持っている・買う人が見ておきたい「修繕積立金」
分譲マンションを購入・保有している場合、外壁や屋上防水などの大規模修繕は、区分所有者が積み立てている「修繕積立金」から支払われます。工事費が上振れしやすい環境では、この積立金が計画どおりに足りるかどうかが、これまで以上に重要な確認ポイントになります。
新築マンションの販売時によく見られる「段階増額積立方式」は、当初の積立金を低く設定し、数年ごとに増額していく仕組みです。将来の増額幅が、当初の説明より大きくなる可能性もゼロではないため、長期修繕計画書に記載された増額のタイミングと金額、直近の見直し年月を確認しておくと安心です。
新築を検討している場合に確認しておきたいこと
新築の購入を検討している場合は、契約前に工期の見込みと、万一工期が延びた場合の取り扱い(引き渡し遅延時の補償や違約金の有無)を確認しておくと安心です。見積書に記載された金額の有効期限や、資材・人件費の変動に応じて価格が変わる条項があるかどうかも、契約前に確認しておきたいポイントです。
TSRの調査で報じられている数字(2026年1〜8月)
- 鳶工事業の倒産件数(1〜8月)
- 110件
- 同期間で100件を超えた水準
- 16年ぶり
- このペースが続いた場合の年間見込み
- 170件
- 建設躯体工事従事者の有効求人倍率
- 7.94倍
前年同期比+26.4%
前回は2010年同期の101件
2010年の年間最多148件を上回る可能性
全業種平均1.18倍(TSR調査、単一情報源)
立場別に見ておきたいポイント
| 立場 | 人手不足・コスト上昇局面で確認したいこと |
|---|---|
| 新築を検討中の人 | 工期遅延時の取り扱い、見積りの有効期限、価格変動条項の有無 |
| 既存マンションの区分所有者 | 修繕積立金の残高、長期修繕計画書の増額スケジュールと最終見直し時期 |
| 投資用物件のオーナー | 大規模修繕の実施予定時期と、積立金不足時の一時金徴収の可能性 |
よくある思い込みと対策
✕「職人不足のニュース=来年は必ず値上がりする」と単純に考えてしまう。
→地域や工事内容によって差が大きいため、個別の見積りや管理組合の資料で確認する。
✕修繕積立金の説明会資料にある「段階増額」の条項を読み流してしまう。
→長期修繕計画書で増額のタイミングと金額、直近の見直し年月を確認する。
✕新築の見積り金額を、引き渡し時まで変わらない確定額だと思い込む。
→見積りの有効期限や価格変動条項の有無を契約前に確認する。
✕投資用物件で、将来の大規模修繕費用や一時金徴収の可能性を見落とす。
→管理組合の総会議事録や長期修繕計画書で、直近の議論内容を確認する。
人手不足・コスト上昇局面で確認しておきたいこと
- 検討中の新築物件について、工期遅延時の取り扱いを確認した
- 見積書に価格変動条項があるかどうかを確認した
- 保有・検討中のマンションの長期修繕計画書を確認した
- 修繕積立金の残高と、今後の増額スケジュールを確認した
- 直近の管理組合総会の議事録に目を通した
- 疑問点は管理会社や仲介会社に個別に確認する予定を立てた
よくある質問
- Q. 鳶工事業の倒産が増えると、必ず新築マンションの価格が上がりますか?
- A. TSRの調査は倒産件数や原因を集計したものであり、価格への影響を数値で試算したものではありません。人手不足やコスト上昇が起きやすい環境にあることは事実ですが、実際の価格は物件ごとに異なるため、個別の見積りで確認することをおすすめします。
- Q. 修繕積立金が将来値上がりするかどうかは、どこで確認できますか?
- A. 多くの場合、長期修繕計画書に将来の増額スケジュールが記載されています。管理会社や管理組合に、直近の見直し状況とあわせて確認するとよいでしょう。
- Q. 新築の契約前に、工期の遅れについて何を確認すればいいですか?
- A. 引き渡しが遅れた場合の補償や違約金の有無、見積り金額の有効期限、資材・人件費の変動に応じた価格変更条項の有無を、契約前に確認しておくと安心です。
SUMIMOTO Hubのアプリでは、24時間対応のAIアドバイザーが、長期修繕計画書の読み方や修繕積立金の確認ポイントを多言語で解説します。実際の増額幅や工事費の見積りについては、管理会社や有資格の専門家に確認することをおすすめします。
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