海外から日本の口座へ送金すると贈与税がかかる?家族間の資金移動で申告が必要になるケース
日本で不動産を購入する、あるいは生活を始める際、海外に住む親や配偶者から購入資金や生活資金の援助を受けるケースは珍しくありません。「家族の間のお金のやり取りだから税金は関係ない」と考えがちですが、一定額を超える資金移動は贈与税の対象になり得ます。
本記事では、誰が日本の贈与税を納める義務を負うのか、海外からの送金がどのように税務署に把握されるのか、税額の目安と申告の流れを整理します。個別の事情により結論は変わるため、実際の資金移動を計画する際は税理士への相談を前提にお読みください。
誰が日本の贈与税を納める義務を負うの?
贈与税の納税義務者は、財産をもらった人(受贈者)が贈与を受けた時点で日本国内に住所を有しているかどうかによって区分されるとされています。受贈者が日本に住所を有していれば、贈与財産が国内・国外のどちらにあっても、原則として贈与財産の全部が課税対象になるとされています(居住無制限納税義務者)。
一方、受贈者が日本に住所を有していない場合でも、日本国籍があり、贈与前10年以内に日本に住所を有していたことがあるなどの事情に該当すると、国外財産を含めて課税対象になることがあるとされています。受贈者・贈与者双方が日本に住所を有しない場合は、原則として日本国内にある財産のみが課税対象になるとされていますが、判定は個々の在留状況によって変わるため、送金前に税理士へ在留資格・滞在期間を含めて確認することが実務上勧められます。
海外からの送金は税務署に把握される?——国外送金等調書制度
「海外からの送金だから日本の税務署には分からないのでは」と考える方もいますが、日本では金融機関が一定額を超える国外送金等について税務署へ調書を提出する仕組みが設けられているとされています。具体的には、為替取引によって100万円を超える国外送金等を行った場合、取り扱った金融機関がその翌月末日までに所轄税務署へ「国外送金等調書」を提出する義務を負うとされています。
したがって、100万円を超える送金を複数回に分けて行っても、金融機関側の記録は残ります。税務署は送金記録と申告内容を照合できる立場にあるため、贈与に該当する資金移動を「申告しなければ分からない」という前提で計画することは、実務上リスクが高いとされています。
押さえておきたい数字(目安)
- 国外送金等調書の提出基準額
- 100万円超
- 暦年課税の基礎控除(特例)
- 110万円
- 贈与税の申告・納付期間の目安
- 2/1〜3/15
- 非居住者でも課税対象になりうる目安期間
- 10年以内
金融機関が税務署へ提出する送金額の目安
租税特別措置法による特例。超えた部分に課税
贈与を受けた年の翌年
贈与前に日本国内に住所を有していた期間の目安
贈与税はどう計算する?——暦年課税と相続時精算課税
贈与税の課税方式には、大きく分けて暦年課税と相続時精算課税の2つがあるとされています。暦年課税は1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計額から基礎控除額を差し引いた残額に、贈与税率を掛けて計算する方式です。基礎控除額は、相続税法本法では60万円と定められていますが、租税特別措置法による特例で年110万円に読み替えられているとされています。
相続時精算課税は、一定の要件を満たす親子・祖父母孫間の贈与について、選択制で利用できる制度とされています。選択した年以降の贈与について基礎控除110万円を控除したうえで、将来の相続時に贈与財産と相続財産を合算して精算する仕組みで、いったん選択すると暦年課税へ戻せない点に留意が必要とされています。どちらの方式が有利かは贈与の目的・金額・将来の相続財産の見込みによって変わるため、一律の結論は出しにくいとされています。
暦年課税と相続時精算課税の違い(目安)
| 暦年課税 | 相続時精算課税 | |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 累計2,500万円の特別控除+年110万円 |
| 適用対象 | 制限なし | 原則、親・祖父母から子・孫への贈与など要件あり |
| 税率 | 累進税率 | 特別控除超過分に一律の税率 |
| 相続時の扱い | 原則、相続財産に加算されない(一定の生前贈与を除く) | 贈与財産を相続財産に合算して精算 |
| 選択の可否 | 特段の手続き不要 | 一度選択すると暦年課税へ戻せないとされる |
夫婦・親子間の送金でも贈与税がかかることがある?
「家族なのだから贈与税はかからない」という理解は誤解であるとされています。名義預金(実質的な出資者と口座名義人が異なる預金)や、住宅取得資金の一部を親から出してもらうケースなどは、実質的に贈与とみなされる可能性があるとされています。特に不動産の購入資金として海外の家族から多額の送金を受け、その資金で取得した不動産の名義を送金を受けた本人にする場合は、贈与に該当するかどうかを慎重に確認しておくことが勧められます。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産または居住用不動産の取得資金を贈与した場合には、基礎控除とは別に最大2,000万円までの配偶者控除の特例が設けられているとされています。ただし、婚姻期間の要件や適用手続きなど細かい条件があるため、該当する可能性がある場合は税理士に個別の要件を確認することが実務上望ましいとされています。
根拠となる主な法令
- 相続税法 第1条の4
- 贈与税の納税義務者を、受贈者が贈与を受けた時点で日本国内に住所を有するかどうか等によって区分し、課税対象となる財産の範囲を定めています。
- 相続税法 第2条の2
- 贈与税の課税対象となる財産の範囲について、納税義務者の区分ごとに定めています。
- 租税特別措置法(暦年課税の基礎控除の特例)
- 暦年課税の基礎控除額について、相続税法本法の60万円に代えて年110万円とする特例を定めているとされています。
- 相続税法 第21条の9〜第21条の18(相続時精算課税)
- 相続時精算課税制度の選択要件、基礎控除、相続時の精算方法などを定めています。
- 相続税法 第21条の6(贈与税の配偶者控除)
- 婚姻期間20年以上の配偶者間における居住用不動産等の贈与について、基礎控除とは別に控除の特例を認める規定です。
- 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律 第4条第1項
- 金融機関が100万円を超える国外送金等について、税務署へ国外送金等調書を提出する義務を定めています。
よくある見落としと対策
✕親からの送金を「借入れ」として処理したが、返済実績や借用書がなく、税務調査で実質的に贈与と認定された。
→借入れとして扱う場合は、金銭消費貸借契約書を作成し、返済期日・利息の定めに沿って実際に返済実績を残す。
✕複数回に分けて100万円以下ずつ送金すれば申告不要と考えていたが、年間の合計額で課税判定される基礎控除を超えていた。
→1年間(1月1日〜12月31日)の受贈額の合計で基礎控除の超過を確認する。
✕購入した不動産の頭金を親に負担してもらったが、登記名義を自分だけにしたため、負担分が贈与とみなされる可能性に気づいていなかった。
→資金負担の割合に応じて共有名義にする、あるいは贈与として認識したうえで申告する。
✕相続時精算課税を選択した後に、暦年課税に戻せることを前提に資金計画を立てていた。
→相続時精算課税は選択後の変更ができないとされているため、選択前に将来の相続財産の見込みまで含めて検討する。
海外からの送金前に確認したいこと
- 贈与を受ける人が贈与時点で日本に住所を有しているかを確認した
- 年間の受贈額の合計が基礎控除(年110万円)を超えるかを試算した
- 借入れとして扱う場合は金銭消費貸借契約書を用意した
- 配偶者控除など利用できる特例の要件に該当するかを確認した
- 国外送金等調書の対象となる送金額(100万円超)を把握した
- 相続時精算課税を選択する場合は、選択後は暦年課税へ戻せない点を理解した
- 税理士に個別の在留状況・送金目的を伝えて課税関係を確認した
よくある質問
- Q. 親から一時的に借りたお金として使い、あとで返済すれば贈与税はかからない?
- A. 実態として返済されていれば贈与に該当しないとされていますが、返済実績や契約書がない場合、税務調査で贈与と判断される可能性があるとされています。借入れとして扱う場合は契約書の作成と実際の返済が重要です。
- Q. 贈与税の申告を忘れていた場合はどうすればいい?
- A. 気づいた時点で早めに税理士に相談し、自主的に期限後申告を行うことで、無申告加算税が軽減される可能性があるとされています。放置せず早期に対応することが勧められます。
- Q. 外国籍で日本に住んでいる場合も贈与税の対象になる?
- A. 国籍にかかわらず、贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していれば、原則として贈与税の納税義務者になるとされています。在留資格の種類自体が直接の判定基準ではないとされていますが、個別の事情により判断が分かれるため確認が必要です。
- Q. 100万円以下の送金なら何回行っても大丈夫?
- A. 1回あたりの送金額が国外送金等調書の提出基準(100万円)を下回っていても、年間の受贈額の合計が基礎控除を超えれば贈与税の対象になり得るとされています。回数を分けること自体が課税を避ける方法にはならないとされています。
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