空室が出たら収支はどう変わる?収益物件の空室リスクを数字で確かめる
収益物件のパンフレットに載っている利回りは、多くの場合「満室で家賃が入り続ける」ことを前提にした数字です。実際には退去と入居の入れ替わりが必ず起き、その間は家賃が入りません。
この記事では、空室が1回出たときに年間の手取りがどれだけ変わるのかを試算例で確かめ、賃貸借契約のルールと空室を減らす打ち手を整理します。数値は説明用の仮定であり、実際の物件・契約によって異なります。
空室は1年にどれくらい起きる?
空室の発生頻度は、エリア・駅からの距離・間取り・築年数によって大きく変わります。単身者向けの物件は入れ替わりが比較的多く、ファミリー向けは入居が長く続く傾向があると言われますが、一般論にすぎません。
購入前には、売主や管理会社から過去数年分の入居履歴(入居期間・空室期間)を出してもらい、現在の満室が「たまたま」でないかを確認するのが実務上の基本です。
試算例の前提(説明用の仮定)
- 月額家賃
- 10万円
- 年間の空室期間
- 2ヶ月
- 満室想定に対する手取り賃料の割合
- 62.5%
1戸の区分マンションを想定
退去から次の入居開始まで
下表の試算による
空室・広告料・原状回復を入れると手取りはいくら?
空室が出ると、家賃が入らない期間だけでなく、次の入居者を探す広告料(仲介手数料に相当する費用として、家賃1ヶ月分程度が目安とされることがあります)や、退去後の原状回復費も発生します。
下の表は、月額家賃10万円の物件で2ヶ月空室になり、広告料を1ヶ月分、原状回復費を15万円と仮定した試算です。管理費・修繕積立金・税金・ローン返済は含めていません。
年間の賃料収入の試算例(仮定)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 満室想定の年間家賃 | 120万円 | 10万円 × 12ヶ月 |
| 空室2ヶ月分 | −20万円 | 家賃が入らない期間 |
| 広告料(1ヶ月分と仮定) | −10万円 | 募集条件による |
| 原状回復費(仮定) | −15万円 | 損耗の程度による |
| 手元に残る賃料収入 | 75万円 | 満室想定の62.5% |
同じ物件でも、空室がなければ年間120万円、空室が1回出ると75万円という見え方になります。表面利回りだけで比べると、この差が見えなくなります。
賃貸借契約のルールは空室リスクにどう関わる?
空室リスクは「入居者がいつ出ていくか」だけでなく、「貸主から契約を終わらせられるか」にも関わります。普通借家契約では、貸主側からの更新拒絶や解約には法律上の制約があり、家賃を下げたくても入居者を入れ替えにくい場面があります。
押さえておきたい条文(借地借家法)
- 借地借家法 第 26 条
- 期間の定めのある建物賃貸借で、期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新しない旨の通知をしないと、従前と同一の条件で更新したものとみなされるとされています。
- 借地借家法 第 28 条
- 貸主からの更新拒絶や解約の申入れには「正当の事由」が必要とされ、立退料の提供なども考慮要素になり得ます。
- 借地借家法 第 38 条
- 書面等による定期建物賃貸借(更新がない契約)の仕組みを定めています。契約の入口で説明や書面の要件を満たす必要があります。
空室を減らし、影響を小さくするには?
空室対策は、入居者を呼ぶ工夫と、空室が出ても耐えられる資金計画の両面で考えます。前者は募集条件・設備・管理会社の客付け力、後者は空室期間を長めに見込んだ収支とキャッシュの備えです。
よくある漏れと対策
✕利回りを満室前提で計算し、空室が出た途端にローン返済が回らなくなった。
→年間2〜3ヶ月程度の空室を織り込んだ収支で、返済後もプラスになるかを購入前に試算する。
✕管理会社の募集活動を確認せず、空室が長期化した。
→募集の掲載媒体・内見件数・条件見直しの提案頻度を、定期的に報告してもらう。
✕同じ時期に契約満了が集中していた。
→レントロールで各戸の満了時期を確認し、更新・退去が重なる月の資金を手当てしておく。
購入前の空室リスク確認リスト
- 過去3年程度の入居期間と空室期間を確認した
- 各戸の契約満了時期をレントロールで確認した
- 年2〜3ヶ月の空室を織り込んだ収支を試算した
- 広告料・原状回復費の負担ルールを管理会社に確認した
- 空室時にも返済できる手元資金の目安を決めた
- 周辺の募集賃料と募集期間を不動産ポータルで確認した
よくある質問
- Q. 空室率はどれくらいで見積もればいい?
- A. 一律の正解はなく、エリア・物件タイプで異なります。保守的な試算として、年間1〜3ヶ月程度の空室を織り込む方法が実務上よく使われます。
- Q. 家賃を下げれば空室はすぐ埋まる?
- A. 埋まりやすくなる場合はありますが、下げ幅と収益のバランスが重要です。周辺相場や設備面の見直しと合わせて検討するのが一般的です。
- Q. 定期借家にすれば空室リスクは減る?
- A. 契約期間が明確になる利点はありますが、更新がない分、再契約や募集が必要になります。入居者に選ばれにくくなる場合もあるため、条件を総合的に判断してください。
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